2014年07月07日

その他の脳梗塞(4)

●その他の脳梗塞(4)


●血管炎によるもの

血管炎としては抗リン脂質抗体症候群、全身性エリテマトーデスによるものが若年性脳梗塞の原因として有名である。


●抗リン脂質抗体症候群

原発性抗リン脂質抗体症候群とSLEなどに合併する続発性抗リン脂質抗体症候群が知られている。

全身の血管に血栓が形成されるが動脈にも静脈にも血栓形成が起こりうるのが本疾患の特徴と考えられている。

動脈系血栓の約90%が脳血管においておこるとされている。

抗リン脂質抗体陽性例のうち、血栓症を合併するものは20〜30%とされており大部分の症例では血栓症は生じない。

しかし、一度発症した症例のうち、半数以上で繰り返し血栓症を起こすことが知られている。

静脈血栓症にはワーファリンを使用し、動脈血栓症に対しては少量のアスピリン療法などが行われる。

一般検査においては、血小板減少(40〜50%)、APTT延長、梅毒血栓反応生物学的偽陽性などの所見、既往に習慣性流産、血栓症の既往があれば、抗リン脂質抗体症候群を疑う。

これらの所見がなくとも若年者での脳梗塞やリスクファクターが少ない症例では抗カルジオリピン/β2GPI抗体、ループスアンチコアグラント、抗プロトロンビン抗体などの検査を行うことがある。


●原発性脳血管炎(PACNS)

原発性脳血管炎(PACNS)は中枢神経(CNS)に限局した血管炎であり、主に脳や脊髄の軟膜および脳実質内の長径200〜300μmの細動脈から中動脈レベルの血管が障害される。

原因ははっきりとはしておらず、マイコプラズマ、水痘帯状疱疹ウイルスなどの感染を契機に血管炎を引き起こす例や血管にアミロイド沈着などが認められ複数の原因の関与が示唆されている。

症状の進行は一般的に亜急性の経過を辿ることが多いが、痙攣などで急性に発症する例や頭痛が持続する慢性の経過を辿ることもある。

臨床症状としては認知機能低下83%、頭痛56%、痙攣や発熱30%、脳梗塞14%、脳出血12%の順に多く脊髄血管も障害された場合はそれに応じた症状が出現する。

40〜60歳発症が多く、男女差はない。


診断のゴールドスタンダードはカテーテルによる脳血管造影、脳生検(軟膜や脳皮質の小血管炎)などである。全

身性炎症反応は乏しいが髄液検査では何らかの異常が認められる。

MRIでは血管炎に船尾なって単発、または多発の白質、灰白質の脳梗塞巣や出血巣が確認され、腫瘍状にみえることもある。

また小血管炎の結果、白質病変が認められる。血管造影では小動脈の拡張、狭窄を示しビーズ状と称される。

その他周辺の血管やそこからはずれた血管も不揃いで閉塞や途絶が認められる。

治療は結節性多発動脈炎の治療に準じて、ステロイドとシクロホスファミドの併用療法などが行われることがある。


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2014年07月04日

その他の脳梗塞(2)

●ワレンベルグ症候群

延髄には心臓血管中枢、呼吸中枢があるため無呼吸や低換気、不整脈による突然死に注意が必要である。



●Trousseau症候群 (Trousseau syndrome)

後天性凝固異常症のひとつとなるが、悪性腫瘍の遠隔効果による血液凝固異常により脳塞栓症をきたすことがあり、坦癌患者に合併する脳梗塞をTrousseau症候群(トルソー症候群)という。Trousseau症候群の原因となる悪性腫瘍として頻度の高いものは固形癌であり、腺癌、特にムチン産出腫瘍が多いとされている。

固形癌の中では乳癌や子宮癌など婦人科腫瘍が最も多く、肺癌、消化器癌、腎臓癌、前立腺癌なども多い。

悪性腫瘍に伴う血液凝固異常はDダイマー、FDP、PICといった二次線溶系マーカーが異常高値を示すことが多い。

二次線溶系マーカー異常高値を示すものとしては胸腹部大動脈瘤、重度の深部静脈血栓症などがある。

奇異性脳塞栓症や心原性脳塞栓症ではDダイマーは高くとも5.0mg/dl程度でありFDPやPICは正常範囲にとどまることが多い。

坦癌患者における脳梗塞の成因の多くはDICに併発した非細菌性血栓性心内膜炎(NBTE)による心原性脳塞栓症であり、ついでTrousseau症候群、細菌性塞栓、腫瘍塞栓、脳静脈、静脈洞血栓症などがあげられる。

Trousseau症候群の治療法は低分子ヘパリンが有効であるが、予後を左右するのは原疾患の治療である。




●脳静脈・静脈洞洞血栓症(CVT)

脳静脈・静脈洞洞血栓症(CVT)は脳の静脈あるいは静脈洞が閉塞して静脈還流障害がおこり、頭痛、痙攣、意識障害などの症状が、急性あるいは亜急性に発症する疾患である・全脳卒中の1%未満であるが決して稀なしっかんではない。

症状は多彩であるが頭痛(90%)、痙攣(40%)、意識障害(60%)が急性ないし、亜急性に認められた場合はCVTを鑑別する必要がある。


50歳未満の女性や子供に多いとされる。

妊娠、産褥、悪性疾患静脈洞に隣接する耳、乳突蜂巣、副鼻腔の感染、細菌性髄膜炎などから波及する場合、凝固亢進状態など多彩な病態を基礎に発症する。

Dダイマーが正常値であればCVTの可能性は低い。

SWIを含むMRIで血栓化した静脈または静脈洞を確認し、MRVでそれと同じ静脈が描出されないことを証明するのがgold standardである。


大規模な臨床研究で有効性を検討したものはないが急性期はヘパリンの持続点滴で治療されることが多い。

早期に診断して治療ができれば予後は比較的良好である。

原因疾患があればそれの治療、痙攣、脳浮腫に対する治療も併用する。

再発予防は3ヶ月〜12ヶ月のワーファリンと原因疾患の治療である。



●脳アミロイドアンギオパチ-(CAA)

脳血管にアミロイドが沈着することで血管壁が脆弱化したり、内腔の狭窄、閉塞が生じ、その結果脳出血や脳梗塞が生じる。Boston criteriaで診断される。



●線維筋性形成異常症(FMD)

若年性脳梗塞の原因のひとつとして欧米では多数報告されているが日本では稀である。


●遺残原始血管

血管の奇形によって動脈硬化が進行する場合がある。


●CADASILとCARASIL

CADASILを疑う場合の臨床的特徴は、40〜50歳と比較的若年発症、脳卒中のリスクファクターを有さない、ラクナ梗塞発作を繰り返し、次第に進行して仮性球麻痺や認知症症状を呈する、家族に類似症状を認める(常染色体優性遺伝形式)ことである。

常染色体優性遺伝形式をとる若年性脳梗塞を試た場合、特に小血管病変の場合はCADASILを疑う。

CADASILには病気としては3期知られている。

第1期は前兆を伴う片頭痛とMRIにて境界鮮明な深部白質病変が認められる。

第2期ではTIAや脳梗塞を生じたり、うつなどの精神症状が出現しMRIで深部白質の癒合性病変、ラクナ梗塞巣をみる。

第3期では認知症や仮性球麻痺、MRIではびまん性深部白質病変のように進行していく。

CADASILの診断基準ではDavousらのものが知られている。

病理学的には脳実質小動脈の中膜筋層の変性、消失と外膜の線維性肥厚および血管壁の非アミロイド性の好酸性PAS陽性顆粒沈着で確認される。

確定診断では遺伝子解析でNotch3変異(特にhot spot exon3、4)を確認するか皮膚、筋生検でNotch3細胞外ドメインに対する抗体を用いた免疫染色でGOM(granular osminophilic material)を確認することが必要である。

重要な類似疾患にCARASILがある。

高血圧を伴わず細動脈硬化によって生じる白質脳症であり常染色体劣性遺伝を示す疾患である。

白質脳症と30歳代から進行する認知症はCARASILと類似するが、反復性の腰痛や変形性脊椎症、禿頭はCARASILに特徴的な所見である。

HTRA1遺伝子の機能喪失から生じるTGFβファミリーシグナル伝達系の抑制不全が細動脈硬化に関与している。

病理学的には血管内皮の増殖が著明であり、中膜のTGFβ1の発現の増加とともに内膜では細胞外マトリックスの発現増加がみられる。

有効な治療法はみつかっておらず、抗血栓薬が用いられるが有効性は確認されていない。


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2014年06月30日

その他の脳梗塞

●その他の脳梗塞

その他の脳梗塞にはBAD(branch atheromatous disease)、Trousseau症候群(悪性腫瘍の遠隔効果)、血液凝固異常、動脈解離、静脈梗塞、血管炎、抗リン脂質抗体症候群が含まれる。


●BAD(branch atheromatous disease)

ラクナ梗塞とアテローム血栓性脳梗塞の中間となる病態にBADと呼ばれるものがある。

1989年にCaplanによって提唱された。

BADとは穿通枝が主幹動脈からの近傍で閉塞することによって生じる穿通枝領域の梗塞である。

穿通枝の病変であるが高血圧性の血管壊死を起こさず、アテローム硬化が原因であり長径15mm以上の梗塞を起こす。



ラクナ梗塞の診断のもと抗血小板療法を行うが徐々に症状が悪化する例が報告されていたが、これがBADという概念に纏められた。

レンズ核線条体動脈(特に外側線条体動脈)、視床膝状体動脈、前脈絡叢動脈、Heubner反回動脈、視床穿通動脈、傍正中橋動脈領域でBADは起る。

特に外側線条体動脈、傍正中橋動脈は好発部位である。

よって外側線条体動脈の支配領域である大脳基底核や傍正中橋動脈の支配領域である橋腹側でラクナ梗塞を疑う症状、病変をみたらBADの可能性を考える。



頭部MRIによる画像では血管走行に一致し、外側線条体動脈領域では上下に傍正中橋動脈では前後に長い(脳表に病変がありそれが深部、橋被蓋方向に扇形になる)。

外側線条体動脈領域では母動脈である中大脳動脈の血管内皮障害が少なく、穿通枝近位部のプラークが傍正中橋動脈では脳底動脈壁のプラークが主体をなしていると考えられている。

アテローム血栓性脳梗塞に基づいて抗凝固療法を行うべきと考えられているが治療法は確立していない。

アルガトロバン、シロスタゾール、エダラボン併用療法など様々なカクテル療法も試みられている。



●解離(dissection)によるもの

動脈内膜の損傷により、内膜と中膜の間に解離腔が形成される。

外傷でも起こるが自然にも生じる。

解離のために動脈内腔が狭窄したり閉塞したり外膜に動脈瘤様の拡張をきたしたりする。

近年は椎骨動脈系で多い。大したリスクのない若い人が突然の後頸部痛に伴って発症することが多い。

ワレンベルグ症候群を呈することもよくある。


脳動脈解離は画像診断の進歩によって明らかになった概念であり、若年性脳梗塞の最大の原因であり、クモ膜下出血の原因としても重要である。

クモ膜下出血を認める椎骨動脈解離は致死的な再出血を予防するために直ちに外科的手術を行う。

血管内治療が第一選択となる。解離腔と後下小脳動脈、前脊髄動脈、穿通枝の位置関係、対側椎骨動脈の灌流状況を確認し、血管内治療、開頭手術(バイパス術含め)あるいはこれらを組み合わせて治療を行う。

外科的治療が困難な場合は再出血防止のための保存的治療を行う。


クモ膜下出血を伴わない頚部動脈解離では保存的治療が第一選択となる。

心筋梗塞と大動脈解離は治療が大きく異なるが、脳動脈解離では治療は脳梗塞に準ずる。

解離や出血の誘発を行わない程度に脳梗塞の治療を行う。カタクロットやバイアスピリンといった抗血小板薬は未破裂動脈瘤の出血率を上昇させないというエビデンスがあるため、血圧を正常からやや低めに保ち抗血小板療法を行う。解離の進行が認められたら外科的処置を検討する。

近年はステントなど外科的な治療も試みられており、特に慢性閉塞性血管障害ではよい適応となっている。



●内頚動脈解離

頭痛や頭部痛などの血管の解離による症状と解離に伴う脳虚血、もしくは出血症状が認められる。

initimal flap、double lumenといった直接所見(2つの腔が見える)、pearl and string sign(比較的広い範囲のリボン様の不正狭窄を伴う動脈拡張)、string sign、pearl sign比較的広い範囲のリボン様の不正狭窄)、tapered occlusion(先細り状の閉塞所見)などの間接所見が知られている。

慢性期には壁内血腫(intramural hematoma T1WIで三日月状の高信号域)が認められることもある。

壁内血栓の出現と消失を確認し動脈解離と診断することもある。

頭頚部動脈解離の原因としては外傷性、医原性、特発性に分類される。

特発性では基礎疾患として結合組織疾患が存在することがある。

代表的なものとしては線維筋形成不全、嚢胞性中膜壊死、マルファン症候群、骨形成不全症、家族性多発嚢胞腎、弾性線維性黄色腫、エラース・ダンロス症候群などがあげられる。

出血に対しては最出血予防のため出血部の閉塞の外科的処置を行い、虚血に対しては保存的治療が第一である。

解離性動脈瘤を合併している場合は注意が必要である。


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2014年06月26日

脳梗塞の分類(2)「ラクナ梗塞」

●脳梗塞の分類(2)

●ラクナ梗塞

ラクナ梗塞( 英: lacunar infarction )は本来、直径1.5cm以下の小さな梗塞を意味する。

古典的には下記に示した5つの病型に含まれ、穿通枝領域に病変があり、皮質は病変に含まれない。

書物によっては無症候性ラクナ梗塞という疾患も定義されるが無症候性ラクナ梗塞と慢性虚血性変化の区別が難しく古典的には無症候性ラクナ梗塞はラクナ梗塞に含まれない。

ラクナ梗塞は上記の2種類とは違った機序が関わっているとみられていることからそれ自体がひとつの分類となっている。

主に中大脳動脈や後大脳動脈の穿通枝が硝子変性を起こして閉塞するという機序による。

ただし中大脳動脈穿通枝のうち、レンズ核線状体動脈の閉塞では、線状体内包梗塞と呼ばれる径20mm以上の梗塞となることがあり、片麻痺や感覚麻痺・同名半盲などの症状が現れることもある。

後大脳動脈穿通枝の梗塞では、ウェーバー症候群やベネディクト症候群(赤核症候群)を起こすことがある。



リスクファクターは高血圧。症状は片麻痺や構音障害などであるが、軽度または限定されたものであることが多く、まったく無症状であることも多い。

意識障害を認めることはほとんどなく、失語症、半側空間無視、病態失認といった神経心理学的な症候(皮質症候)も通常は見られない。

多発性脳梗塞とよばれるもののほとんどはこのラクナ梗塞の多発であり、多発することで認知症・パーキンソニズム(脳血管性パーキンソン症候群)の原因となることがある。

ラクナ梗塞であるのかアテローム血栓性脳梗塞であるのかは、ラクナ梗塞のタイプを知っていると分かりやすい。

症状が軽い、梗塞巣が小さいだけでは鑑別が難しくなることもあるからである。



特徴としては感覚障害と麻痺が同時に存在しないタイプがラクナ梗塞ではありえるということである。

TOAST分類では臨床症状でラクナ症候群を示し穿通枝領域の1.5cm以内の小梗塞であり、病巣近位の責任血管の50%以上の狭窄は認めないものとされている。


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2014年06月18日

アテローム血栓性脳梗塞の発症機序(2)

●アテローム血栓性脳梗塞の発症機序(2)


血行力学性(hemodynamic)によるものとは 一時的に血圧が下がったために、脳の一部が十分な血流を得ることができなくなって壊死に陥ったものである。

血栓性や塞栓性では壊死しにくい分水嶺領域に発症することが特徴的である。

分水嶺領域(Watershed Area)とは、どの動脈に栄養されているかで脳を区分した時に、その境目に当たる区域のことである。

この部分は、一方の動脈が閉塞してももう一方から血流が得られるため動脈の閉塞に強い。

しかし、動脈本幹から遠いため血圧低下時には虚血に陥りやすいのである。

この場合は診断名はアテローム血栓性脳梗塞である。





他には動脈硬化が原因の脳梗塞としてartery to artery embolism(A to A)というものがある。

内頚動脈や椎骨動脈のアテローム硬化巣から血栓が遊離して末梢の血管を閉塞する。

皮質枝にも穿通枝にも塞栓を起こしえる。

心原性脳塞栓と同様活動時突発性発症が見られやすい。

画像上は典型的には皮質枝、即ち大脳皮質にMRI拡散強調画像 (DWI) で高信号域を認め、散在性小梗塞巣といった形を取りやすい。

もちろん小型というのは他のアテローム血栓性脳梗塞よりはということでラクナ梗塞よりは大型の病変となる。



アテローム硬化には好発部位がある。

基本的には日本人には中大脳動脈に多い。

しかし近年は欧米と同様、頸部内頸動脈の起始部に最も多くなっている。

他の好発部位としては内頚動脈サイフォン部、椎骨動脈起始部、頭蓋内椎骨動脈、脳底動脈である。

アテローム血栓性脳梗塞は他の病型よりも一過性脳虚血発作が先行しやすいと言われている。

閉塞動脈の支配領域の症状を繰り返しやすいという特徴がある。

内頸動脈病変では一過性黒内障が有名である。

これは眼動脈、網膜中心動脈領域の虚血が起こり、患側の視力が一過性に消失する。

典型的にはカーテンが目の前に降りて行くように暗くなると患者は訴える。

椎骨動脈では回転性めまいや嘔吐、構音障害が起こりやすい。

発作の頻度が重要であり、短時間に頻回起こっている場合はcrescendo TIAと呼ばれ、主幹動脈の高度狭窄の存在が示唆される、持続時間の延長は脳梗塞の危険が切迫していると考えられる。

初回TIAが起こってから1か月以内が最も脳梗塞が起こりやすいといわれており、特に近年の研究ではTIA発症後48時間以内に脳梗塞を発症する例が多い(90日以内発症例のうちの約半数)いるため、入院精査と治療が必要と言われている。

アテローム血栓性のTIAならば抗血小板薬を、心原性やcrescendo TIAでは抗凝固療法を行うことが推奨されている。

脳神経系の障害は上位ニューロン障害を起こすと内頸動脈系でも起こりうる。中心前回などが中大脳動脈に還流されるからである。




●塞栓性(脳塞栓症)(embolism)

脳血管の病変ではなく、より上流から流れてきた血栓(栓子)が詰まることで起こる脳虚血。

それまで健常だった血流が突然閉塞するため、壊死範囲はより大きく、症状はより激烈になる傾向がある。

また塞栓は複数生じることがあるので、病巣が多発することもよくある。

原因として最も多いのは心臓で生成する血栓であり、不整脈(心房細動)に起因する心原性脳塞栓が多い。



非弁膜症性心房細動が全体の約半数を示し、その他に急性心筋梗塞、心室瘤、リウマチ性心疾患、人工弁、心筋症、洞不全症候群、感染性心内膜炎、非細菌性血栓性心内膜炎、心臓腫瘍などが含まれる。

このほか、ちぎれた腫瘍が流れてきて詰まる腫瘍塞栓や脂肪塞栓・空気塞栓などもこれに含まれるが、稀な原因である。

シャント性心疾患(卵円孔開存)なども原因となりこれらは奇異性脳塞栓症といわれ後述する。



脳塞栓症では高率に(30%以上)出血性梗塞を起こしやすい。

これは閉塞後の血管の再開通によって、梗塞部に大量の血液が流れ込み、血管が破綻することによりおきる。

心原性塞栓症の際に抗血小板療法や抗トロンビン療法が禁忌である理由はこれを起こさないためである。


心房細動は無症状のことも多く心機能もそれほど低下しないため、特に無症状の場合は合併する脳塞栓の予防が最も重要になる。

心房が有効に収縮しないため内部でよどんだ血液が凝固して血栓となるが、すぐには分解されないほどの大きな血栓が流出した場合に脳塞栓の原因となる。

特に流出しやすいのが心房細動の停止した(正常に戻った)直後であるため、心房細動を不用意に治療するのは禁忌となる(ただし、心房細動開始後48時間以内なら大きな血栓は形成されておらず安全とされる)。



予防には抗凝固薬(ワルファリン)を用いる。

抗血小板薬と併用することで予防効果が高まるという明確な根拠はなく、現在は抗凝固療法単独の治療が行われている。

TOAST分類では1.5cm以上の梗塞巣があり、高度・中等度リスクの塞栓源の心疾患が認められることまたは複数の血管領域に多発する急性期梗塞を確認することが診断基準に含まれる。

TOAST分類では高リスク塞栓源と中等度リスク塞栓源が定義されている。

高リスク塞栓源とは人工弁、心房細動を伴う僧帽弁狭窄症、心房細動(孤立性除く)、●左房血栓、洞不全症候群、心筋梗塞(4週間未満)、左室血栓、●拡張型心筋症、左室壁異常運動、左房粘液腫、感染性心内膜炎である。

中等度リスク塞栓源は僧帽弁逸脱、僧帽弁輪石灰化、心房細動を伴わない僧帽弁狭窄症、●左房もやもやエコー、心房中隔瘤、卵円孔開存、心房粗動、●孤立性心房細動、生体弁、非細菌性心内膜炎、うっ血性心不全、●左室壁異常運動、心筋梗塞(4週間以上6ヶ月未満)である。



なお孤発性心房細動とは心臓を含め全身に特に病気や異常がない心房細動であり高血圧、甲状腺異常、弁膜症がある場合は孤発性に含めない。

発症後数日後のMRAで血管の再開通現象をしばしば認める。

また発症24時間以内のBNP、Dダイマーの軽度上昇がある。

BNP>76pg/ml Dダイマー>0.96ng/mlともに満たせば感度87%、特異度85%で心原性脳塞栓症という報告もある(Stroke. 2008 Aug;39(8):2280-2287)。


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2014年06月14日

脳梗塞とは?  脳梗塞の分類  アテローム血栓性脳梗塞

●脳梗塞とは?

脳梗塞(のうこうそく、英: cerebral infarction/英: stroke、別名:脳軟化症(のうなんかしょう))とは、脳を栄養する動脈の閉塞、または狭窄のため、脳虚血を来たし、脳組織が酸素、または栄養の不足のため壊死、または壊死に近い状態になる事をいう。

また、それによる諸症状も脳梗塞と呼ばれる事がある。

なかでも、症状が激烈で(片麻痺、意識障害、失語など)突然に発症したものは、他の原因によるものも含め、一般に脳卒中と呼ばれる。

それに対して、緩徐に進行して認知症(脳血管性認知症)などの形をとるものもある。



日本においては患者数約150万人であり毎年約50万人発症とされている。

寝たきりの約3割、全医療費の1割を用いている。


日本人の死亡原因の中でも多くを占めている高頻度な疾患である上、後遺症を残して介護が必要となることが多く福祉の面でも大きな課題を伴う疾患である。

ちなみに「脳軟化症」の名の由来は、脳細胞は壊死すると溶けてしまうこと(「融解壊死」)から。




●脳梗塞の分類

脳梗塞は、血管が閉塞する機序によって血栓性・塞栓性・血行力学性の3種類に分類される。

臨床病型としては1990年のNIND-V(NINDS: National Institute of Neurological Disorders and Stroke米国国立神経疾患・脳卒中研究所による分類)がよく知られている。

NIND-Vの分類では局所性脳機能障害をTIAと脳卒中に分類する。

脳卒中は脳出血、くも膜下出血、脳動静脈奇形に伴う頭蓋内出血、脳梗塞に分類し、脳梗塞はアテローム血栓性脳梗塞・心原性脳塞栓・ラクナ梗塞・その他の脳梗塞の4種類に分類される。

分類によって急性期治療および再発予防が異なる、NINDS-Vでは臨床病型の特徴は記載されているが診断基準は示されていない。



治験などではTOAST分類やオックスフォードの分類が用いられることもある。

TOAST分類では大血管アテローム硬化(=アテローム血栓性脳梗塞)、心塞栓症(=心原性脳塞栓症)、小血管閉塞(=ラクナ梗塞)、その他の原因によるもの、原因不明の5つの病型に分類される。

診断基準があるため確実な診断が可能であるが、アテローム血栓性脳梗塞と心原性脳塞栓症のリスクが両方ある場合など複数の原因が考えられる場合に診断ができなくなるため、臨床現場では使いづらい。

オックスフォードの分類は症状と画像所見から分類するものである。



●アテローム血栓性脳梗塞

動脈硬化によって動脈壁に沈着したアテローム(粥腫)のため動脈内腔が狭小化し、十分な脳血流を保てなくなったもの。

また、アテロームが動脈壁からはがれ落ちて末梢に詰まったものもアテローム血栓性に分類される。

アテロームは徐々に成長して血流障害を起こしていくことから、その経過の中で側副血行路が成長するなどある程度代償が可能で、壊死範囲はそれほど大きくならない傾向がある。

また、脳梗塞発症以前から壊死に至らない程度の脳虚血症状(一過性脳虚血発作、TIA)を起こすことが多く、このTIAに対する対処が脳梗塞の予防において重要である。

TOAST分類では病巣近位の責任血管に50%以上の狭窄があること、梗塞巣が1.5cm以上であることが診断基準に含まれる。


●アテローム血栓性脳梗塞の危険因子

リスクファクター(英: Risk factor)は、喫煙、肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧など。

予防は、抗血小板薬(アスピリン・チクロピジン(英: Ticlopidine)・クロピドグレル(英: Clopidogrel)・シロスタゾール・ジピリダモール(英: Dipyridamole)など)によってアテロームの成長を抑制すること、高血圧・糖尿病・脂質異常症は原疾患に対する加療・コントロールを行うこと、また飲水を心がけて血流を良好に保つことである。



●アテローム血栓性脳梗塞の発症機序(1)

アテローム血栓性脳梗塞もいくつかの機序によって起こることが知られている。

一般的に血栓症は動脈硬化による閉塞である。

心筋梗塞の場合はプラークの破綻によって急激に冠動脈が閉塞する場合がほとんどだが脳梗塞の場合はいくつかの機序が知られている。

まずは心筋梗塞と同様にプラークが破綻する場合がある。粥腫に富み、線維性皮膜が薄い場合は不安定プラークといい、こういったプラークは容易に破綻し、血栓による動脈閉塞をおこす。



血管が閉塞、狭窄するとその灌流域が血液途絶を起こし皮質枝梗塞を起こす。

狭窄部が急激な血管閉塞を起こすと心原性脳塞栓と類似した脳梗塞が発生する。

こういったことは頭蓋外の内頸動脈や頭蓋内の脳主幹動脈に多い(血行力学性によるもの参照)。

また、血管の閉塞や高度の狭窄によって血液供給の境界領域(watershed、分水嶺の意味)が乏血状態となり、さらに血圧低下などの血行動態的要因が加わり梗塞が生じる。

こういったことは中大脳動脈や内頚動脈に多い。

内頚動脈に高度狭窄があり、支配領域の脳血流量低下を伴っている場合には、表層前方では前大脳動脈・中大脳動脈皮質枝の境界、後方では中大脳動脈・後大脳動脈皮質枝の境界領域が最も乏血状態に陥りやすいので梗塞をきたしやすい。

深部では中大脳動脈皮質枝と穿通枝の境界領域に起こりやすい。

この機序によっておこる場合は発症後段階的階段状の進行、悪化が見られる(progressive stroke)。



発症時間は夜に多く、起床時に気がつくことも多い。

もともと極めて慢性に進行してきたと考えられ、こういった梗塞をおこす患者は側副血行路が豊富にある場合が多く、代償が可能な間は臨床症状が乏しいこともある。

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