2014年06月18日

アテローム血栓性脳梗塞の発症機序(2)

●アテローム血栓性脳梗塞の発症機序(2)


血行力学性(hemodynamic)によるものとは 一時的に血圧が下がったために、脳の一部が十分な血流を得ることができなくなって壊死に陥ったものである。

血栓性や塞栓性では壊死しにくい分水嶺領域に発症することが特徴的である。

分水嶺領域(Watershed Area)とは、どの動脈に栄養されているかで脳を区分した時に、その境目に当たる区域のことである。

この部分は、一方の動脈が閉塞してももう一方から血流が得られるため動脈の閉塞に強い。

しかし、動脈本幹から遠いため血圧低下時には虚血に陥りやすいのである。

この場合は診断名はアテローム血栓性脳梗塞である。





他には動脈硬化が原因の脳梗塞としてartery to artery embolism(A to A)というものがある。

内頚動脈や椎骨動脈のアテローム硬化巣から血栓が遊離して末梢の血管を閉塞する。

皮質枝にも穿通枝にも塞栓を起こしえる。

心原性脳塞栓と同様活動時突発性発症が見られやすい。

画像上は典型的には皮質枝、即ち大脳皮質にMRI拡散強調画像 (DWI) で高信号域を認め、散在性小梗塞巣といった形を取りやすい。

もちろん小型というのは他のアテローム血栓性脳梗塞よりはということでラクナ梗塞よりは大型の病変となる。



アテローム硬化には好発部位がある。

基本的には日本人には中大脳動脈に多い。

しかし近年は欧米と同様、頸部内頸動脈の起始部に最も多くなっている。

他の好発部位としては内頚動脈サイフォン部、椎骨動脈起始部、頭蓋内椎骨動脈、脳底動脈である。

アテローム血栓性脳梗塞は他の病型よりも一過性脳虚血発作が先行しやすいと言われている。

閉塞動脈の支配領域の症状を繰り返しやすいという特徴がある。

内頸動脈病変では一過性黒内障が有名である。

これは眼動脈、網膜中心動脈領域の虚血が起こり、患側の視力が一過性に消失する。

典型的にはカーテンが目の前に降りて行くように暗くなると患者は訴える。

椎骨動脈では回転性めまいや嘔吐、構音障害が起こりやすい。

発作の頻度が重要であり、短時間に頻回起こっている場合はcrescendo TIAと呼ばれ、主幹動脈の高度狭窄の存在が示唆される、持続時間の延長は脳梗塞の危険が切迫していると考えられる。

初回TIAが起こってから1か月以内が最も脳梗塞が起こりやすいといわれており、特に近年の研究ではTIA発症後48時間以内に脳梗塞を発症する例が多い(90日以内発症例のうちの約半数)いるため、入院精査と治療が必要と言われている。

アテローム血栓性のTIAならば抗血小板薬を、心原性やcrescendo TIAでは抗凝固療法を行うことが推奨されている。

脳神経系の障害は上位ニューロン障害を起こすと内頸動脈系でも起こりうる。中心前回などが中大脳動脈に還流されるからである。




●塞栓性(脳塞栓症)(embolism)

脳血管の病変ではなく、より上流から流れてきた血栓(栓子)が詰まることで起こる脳虚血。

それまで健常だった血流が突然閉塞するため、壊死範囲はより大きく、症状はより激烈になる傾向がある。

また塞栓は複数生じることがあるので、病巣が多発することもよくある。

原因として最も多いのは心臓で生成する血栓であり、不整脈(心房細動)に起因する心原性脳塞栓が多い。



非弁膜症性心房細動が全体の約半数を示し、その他に急性心筋梗塞、心室瘤、リウマチ性心疾患、人工弁、心筋症、洞不全症候群、感染性心内膜炎、非細菌性血栓性心内膜炎、心臓腫瘍などが含まれる。

このほか、ちぎれた腫瘍が流れてきて詰まる腫瘍塞栓や脂肪塞栓・空気塞栓などもこれに含まれるが、稀な原因である。

シャント性心疾患(卵円孔開存)なども原因となりこれらは奇異性脳塞栓症といわれ後述する。



脳塞栓症では高率に(30%以上)出血性梗塞を起こしやすい。

これは閉塞後の血管の再開通によって、梗塞部に大量の血液が流れ込み、血管が破綻することによりおきる。

心原性塞栓症の際に抗血小板療法や抗トロンビン療法が禁忌である理由はこれを起こさないためである。


心房細動は無症状のことも多く心機能もそれほど低下しないため、特に無症状の場合は合併する脳塞栓の予防が最も重要になる。

心房が有効に収縮しないため内部でよどんだ血液が凝固して血栓となるが、すぐには分解されないほどの大きな血栓が流出した場合に脳塞栓の原因となる。

特に流出しやすいのが心房細動の停止した(正常に戻った)直後であるため、心房細動を不用意に治療するのは禁忌となる(ただし、心房細動開始後48時間以内なら大きな血栓は形成されておらず安全とされる)。



予防には抗凝固薬(ワルファリン)を用いる。

抗血小板薬と併用することで予防効果が高まるという明確な根拠はなく、現在は抗凝固療法単独の治療が行われている。

TOAST分類では1.5cm以上の梗塞巣があり、高度・中等度リスクの塞栓源の心疾患が認められることまたは複数の血管領域に多発する急性期梗塞を確認することが診断基準に含まれる。

TOAST分類では高リスク塞栓源と中等度リスク塞栓源が定義されている。

高リスク塞栓源とは人工弁、心房細動を伴う僧帽弁狭窄症、心房細動(孤立性除く)、●左房血栓、洞不全症候群、心筋梗塞(4週間未満)、左室血栓、●拡張型心筋症、左室壁異常運動、左房粘液腫、感染性心内膜炎である。

中等度リスク塞栓源は僧帽弁逸脱、僧帽弁輪石灰化、心房細動を伴わない僧帽弁狭窄症、●左房もやもやエコー、心房中隔瘤、卵円孔開存、心房粗動、●孤立性心房細動、生体弁、非細菌性心内膜炎、うっ血性心不全、●左室壁異常運動、心筋梗塞(4週間以上6ヶ月未満)である。



なお孤発性心房細動とは心臓を含め全身に特に病気や異常がない心房細動であり高血圧、甲状腺異常、弁膜症がある場合は孤発性に含めない。

発症後数日後のMRAで血管の再開通現象をしばしば認める。

また発症24時間以内のBNP、Dダイマーの軽度上昇がある。

BNP>76pg/ml Dダイマー>0.96ng/mlともに満たせば感度87%、特異度85%で心原性脳塞栓症という報告もある(Stroke. 2008 Aug;39(8):2280-2287)。


posted by ホーライ at 00:59| 脳梗塞の説明 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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